<奈良県吉野郡下北山村上池原 池郷川>
石ヤ塔 第3岩壁 「quick gold 205m 5.10d A1」   2003年 

  
     左から第4岩峰~第1岩峰        第3岩峰・第2岩峰        第1岩峰から見る第3岩峰

 1P 40m 5.10d   
 324()、前日まで同行していた川内誠一さんと別れてひとり石ヤ塔に居残り、新ルートの偵察をするべく、第3岩峰へ向かう。
つり橋から20分ほどで第3岩峰の頂上まで見通せるとおぼしきカンテの前に到着する。まわりは木々におおわれていて、位置的状況がわかりにくいが、とりあえず登攀を開始する。
出だしはおとといの雨の影響もあり湿気ていて乾燥状態が悪く、とりあえずワイヤーブラシで掃除をする。1本目のボルトが打てないので、そばの木にロープを張り渡して、ぶら下がりながら打つ。そしてブラシで掃除。
足もとが決まりにくく、何度もすべりながらどうにか大きなホールドをつかまえて、特製の大フックをひっかけて体重をあずけて2本目のボルトを打ちはじめる。
ところが、足をすべらせた反動でフックがはずれ、あえなくグランドフォール。
背中を強打し悪運もつきたかに思えたが、しばらくして起きあがることができる。小一時間ほど休憩して再度アタック。
無事に3本目までのボルトを打て、フリーでも解決するがその上が突破できず、右手のコーナーから土と木の根のつまったクラックをほりおこして、カムでランニングを取り、まわりこむようにして上部のカンテへぬける。
傾斜も少しだけおちたところから、ロープをのばせるだけのばして、危険な浮き岩の頭から斜めのスタンスへあがりこのピッチの終了とする。

 2P  15m 5.10b
 右手上のクラックを掃除しながら前進する。
クラックには、カムがよく効くが複数使用すると指を入れるところが少なくなり、選択に苦労する。
その上ではさらにホールドが乏しくなり、クラックも脆くなってきたので、いったん右手のブッシュ帯へテンショントラバースをして様子をうかがう。
どちらにしても疲れてきたので、「よし、今日はこのぐらいで勘弁してやる」こととして、2ピッチ目の終了点とする。

 3P  40m A1 5.8
 329()、頭上の壁の様子を見て、無理なフリー開拓をあっさり放棄、ブッシュ帯から最初はフリーであるが連続ボルト打ちでルートをのばす。
しかし、世の中何が起こるかわからないもので、穴あけ作業中の金属のペッツル製ハンマーの柄が何の予告もなく突然折れる。
横手の泥のつまったクラックをカムのバーでほりおこして挿入し下降、ことなきを得る。
 46()、到達先端からボルト打ちの再開。(20057月時点では完全フリー化は未達成)
傾斜がおちたところからフリーとなり、日だまりのテラスへ。

 4P  40m 5.7
 ここからは、左手からでもまわりこんで上部へ行けそうであった(実際は行けない)が、はやく第1岩峰の見える場所に出てみたい気持ちがあり、右手のブッシュをトラバースする。やさしそうなチムニーの前を横断してカンテにたどり着きボルトを1本打つ。
横断したチムニーの上部へルートをとり快適にぬけるが、チムニーの奥にはトンネル状の縦穴があり、これからも上へぬけられる面白い構造になっている。そして、第1岩峰の見事な全景を眼前にできる大テラスへの到着となる。
時刻は早いが、アルコールがきれて手がふるえてきたので(ウソです)下降する。

 5P  25m 5.8
 4月17日()、下部の乾燥状態は今ひとつであるが、上部は初夏のような気温上昇で快適なものとなる。
大テラスからはやさしく直上。灌木の根がスタンスを隠しているので仕方なく撤去するが、危うく自分自身をも撤去しそうになる。
フレークを利用して一度右上のバンドへ立ち上がり、快適に次のテラスへ。

 6P  25m 5.10c
 眼前の垂直のフェースはホールドも多そうなのだが、頭上に半畳ほどの剥離寸前のフレークが危険信号を発しているので右手へ登路をとる。
右上の安定したフレークをハンドトラバースしてフックをかけボルトを打つ。
そのフレークに立ち上がりもう1本ボルトを打つ。
そこからは快適なカンテだが、ワンポイントが解決できず(後日フリー)ボルトにかけたカラビナをつかんで前進。
次のクラックも快適な部類だが、上部からは念のためにボルトも打ちながら傾斜のおちたフェースへ。
残りは5メートルほどのやさしそうなスラブで頂上のようにも見えるが、とりあえずこのピッチの終了点とする。
時間はまだ十分あるのでこのまま頂上へ行くべきか、最後の楽しみはとっておくべきか判断に苦しんだが、夏を感じさせる日ざしのなか、精神と肉体の欲するところを悟り下山に決定。

 7P  20m 5.6
 4月26日()、お昼ごろに入山し、午後2時ごろから残された頂上部分の開拓再開。
雨の影響か頭上に少ししみ出しが見えるので、用心のためにボルトを1本打つ。
スラブ状のフェースからカンテに出ると、あっけなく登攀の終わりをむかえた。
いま少しの課題があたえられるものと期待していたが、15分ほどですべてが終了し虚脱感を感じる。
クライミングという行為は永久に続けられるものではなく、いつかは終了点が来るという現実は何度経験しても寂寥感をともなうものである。
第2岩峰の美しい上部岩壁を背景に、目にしみる新緑と青空の真下の頂上で、長い休憩をとりながら下降点のボルト打ち込みを行う。

 今回の登攀を省みると、少々気力が不足していたのは否めないように思われる。
ミスも多く、3ピッチ目は安易な作業に逃避してしまった。ここは、もう少しましなラインも引けたのだろうが、結果が実力のすべてである。
次の目標が登場したときには、これらが反省点となってくれるものであろう。 


      第3岩峰「quick gold 」ルート図


 石ヤ塔 第4岩峰 初登ルート 55m 5.9    2003       

 5月2日()、第4岩峰は第3岩峰の頂上からの印象よりも実際のスケールは小さいように感じられた。ルート自体はあまり楽しくないが、頂上からの眺めは他の岩峰同様にすばらしい。
取り付きへは、第3岩峰からの踏み跡からガレ場へ入り、左手の簡単な岩稜を登りつめるとワイドクラック前に到着する。
傾斜の強いワイドクラックを登り、右手の裏側へトラバースしてからコーナークラックより頂上に達するが、草付きの処理能力も必要となる。
トラバースの前後でピッチを切ると3ピッチのルートとなる。
プロテクションはカム類を使用。


  Copyright (C) 2002 Shinsuke Sugino All Rights Reserved